2017年07月21日

盗撮被害にあうということ

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女性専用カウンセリング Office kei

カウンセラーの中島です。


福岡は今日もいい天気です。

てか、あぢ~。

体脂肪多めのお腹が溶けないかと心配しています(笑


今日は、最近いらっしゃったクライエントさんの話を書きます。

カウンセリング中に聞いた話をブログで書くのは初めてかも…。

(この話はクライエントの了承を得て書いていますが、プライバシー保護のため細部は変更してあります)


その女性は少し前に盗撮被害に遭い、とてもショックを受けていました。


彼女が被害にあったのは、福岡でも大きな繁華街のある駅のエスカレーター。

登りエスカレーターに乗っていると、膝の裏に冷たいものが当たったそうです。

雨降りだったので「傘?」と思ったけれども

すぐに再び当たり、不審に思い振り向くと

後ろに乗っていた男性がライトのついたスマホをさっと隠しました。


「盗撮だ」と思い、どうしようか考えた彼女は、

エスカレーターを降りた瞬間、勇気を振り絞って

「スマホ見せてください」と、その男性に声をかけました。


男性は走って逃げてゆきました。

大声で「盗撮です!捕まえてください!」と叫びながら追いかける彼女。

数100メーター追いかけたところで、

自転車に乗った若い男性がその男性を追いかけてくれました。

犯人とそれを追いかける自転車の男性を見失い

彼女はその場に座り込んで泣いていたのだそうです。

追いかける間も、座り込んで泣いている時も

そんな彼女に声をかけてくれる人もいなかったとか。


しばらくして落ち着きを取り戻した彼女は警察に通報し

駆けつけた警察官とともに警察署へ赴き事情聴取を受けることになりました。

彼女が警察署に着くと、先ほどの自転車の男性が犯人を捕まえてくれていて、すでに警察に連行されていました。


犯人は犯行を認め、福岡県迷惑防止条例違反で逮捕されました。



それからしばらく経って、彼女の変化に最初に気がついたのは一緒に暮らしているお母さんでした。

「最近元気がないよ」とカウンセリングを受けるよう勧めました。


彼女自身は自分の変化にあまり気づかなかったのですが

思い返してみると最近ちょっとしたことでイライラすることが多く

犯人が憎くてたまらないと感じていると話してくれました。


今まで通り仕事に行き、友人とも会っているけれども

怖くてエスカレーターに乗れなくなってしまったこと

事件後しばらくは夢にも出てくるので、あまり眠れなかったこと

友達にも話せずにいること

職場で出会う犯人と同世代の男性にイライラしてしまうことなどが語られました。


事件後、盗撮被害にあった人がどのような心境でいるのか、

どのように解決したのか知りたくて、

ネットで検索をかけてみたそうです。


するとアダルトサイトや「示談にできます」のような弁護士のサイトばかりが検索の上位に上がり

自分の欲しい情報にはアクセスできなかったそうです。

検索ワードの選択によっては、結果は違ったのかもしてませんが・・・。

なんども盗撮と打ち込むこと自体、精神的にきついことだったろうと思います。


彼女は、この事件に遭う前にも

ネット見かける痴漢被害や盗撮被害など性暴力被害の話題で湧き上がる

「被害者の落ち度」とか「冤罪が」などの声に嫌だなという気持ちは持っていたそうです。


被害にあってみて、その声が自分自身にぶつけられているように感じてしまい、

誰かに話せば非難されるのではないかと怖かったと話していました。



皆さんは、盗撮被害を大したことのない事件だと考えますか?


たぶん犯人やそのような写真を好む人は、被害者はさほど傷ついていないと考えるのでしょう。

そもそも、被害者の心情に想いを馳せることなどないのかもしれませんね。


いいわゆるトラウマというほどの出来事ではなくても

本人にとっては安全感に大きなダメージを受ける出来事です。

事件の時に「周囲の人が助けてくれなかった」という体験(孤立無援感)も、ダメージを増幅させてしまいました。


何が辛かったか、怖かったか、たくさん話をお聴きし

「あなたが悪いのではないですよ」

「最後に助けてくれる人がいてよかったですね」

「こういうショックな目に遭うと、誰でも同じように反応するものなのですよ」

何度もそういういうふうに話しました。


最後は笑顔で帰って行かれました。(ほっ)


彼女のように被害を受けた人が、もう少し簡単に有益な情報にたどりつけると良いのに…。

そう思いこの記事を書くことにしました。

被害者の方に役立ちそうなサイトや記事へのリンクを貼っておきます。


           ↓↓↓



盗撮やのぞきの被害に遭った際の対処法



警察による犯罪被害者支援ホームページ



各都道府県警察被害相談窓口



犯罪被害者のメンタルヘルス情報ページ(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター)




性暴力に”優しい”日本 勘違いした大人にならないために

自身の認識、見直してみませんか?



女性が盗撮の被害を受けること、避けること









女性専用カウンセリングルーム office kei 福岡市中央区

http://office-kei.moon.bindcloud.jp/


posted by 中島 葵 at 14:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 性暴力被害 | 更新情報をチェックする

2010年07月29日

いつ、誰が、誰に、どういった場面で

昨日書いたエントリに頂いた反応の中に「時と場所」だけでなく相手がどういう人か、どういう状況にあるかを考えないとダメでしょ(大意)というものがありました。
少し補足します。

「時を選ぶ」には、相手がどのような状況にあるかという時勢が含まれますし、「場所を選ぶ」というのは、家庭内(自分の子どもが対象)なのか、友人や近しい人との雑談中なのか、など、話す相手が誰か、どういった場合に話すか話さないかという選択も当然含まれます。

前提としてそういったことを考えながら書いたわけですが、一般に「性暴力被害からの自衛法」を誰かにアドバイスする機会は、あまりないと思います。
私も、いろいろな場面で何度も「レイプ神話」を否定する話(被害者責任論の否定)をしたことはありますが、経験や知識を元に「性暴力被害からの自衛法」をアドバイスしたのは、自分の子どもだけです。

想定できる例外的なケースがあるとすれば、子どものための防犯教室のようなものでしょうか。

CAP「子どもワークショップ」というプログラムがあります。
( NPO法人 CAPセンター・JAPAN http://www.cap-j.net/ )

私も10年ほど前に大人のためのワークショップに参加して、「子どもワークショップ」が、どのようなプログラムかを知りました。
対象となる子どもの年齢や環境による5つの段階のプログラムがあります。誰しもが持っている基本的な人権の話(自信、安心、自由)から始まり、「いじめ」「連れ去り」「性暴力」などからの身の守り方や(どの程度の距離まで近づいてもいいか、声をかけられたらどう答えるか、危険が迫った時の特別な声のだし方など、具体的な方法)、被害にあったらどうすればいいか、そして「被害にあったのはあなたが悪いからではない」というメッセージまで盛り込まれたワークショップは秀逸です。(それでも、すべての人を傷つけないという保障はない)

また、ワークショップ後に自分が遭った被害を打ち明ける子どももいるため、ワークショップの事前準備として、主催者(学校や子ども会など)に対処法をレクチャーする事までをも含みます。

「自衛法」を人にアドバイスするには、このような周到な準備と心構えがないとできません。素人が不特定多数を相手に何か言えるような簡単なことではないと私は考えています。

posted by 中島 葵 at 14:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 性暴力被害 | 更新情報をチェックする

2010年07月28日

「私が考えた自衛法」

はてなハイク界隈で
悪意のない被害者落ち度論」というキーワードで議論が盛り上がっています。ちと、感想などを書いてみます。

性犯罪を防ぐための有効な自衛の方法を、どんなときも語ってはいけないのか?という問いに対して、私自身は「時」と「場所」を選んで話すのであれば問題ないという考えですが、その場所はネット上ではないだろうと思います。

ずいぶん前の話ですが、福岡県警の警察官がとあるTV番組で、性犯罪加害者が、どのようなシチュエーションで被害者を物色するかという話をしていました。
かなり具体的に語られていたその方法を、私は此処に書く事ができません。自衛のためには非常に役に立つ情報ですが、加害者予備軍にとっても有効な情報になり得るからです。性犯罪被害に遭われた方たちの中には、犯行手口を示唆することになるので、詳細を語ることを避けている人もいます。

ネット上には「性犯罪被害に遭わないために」という趣旨の文章が、かなりあるのではないかと思いますが、それが本当に「自衛」や「防犯」に役だっているかというのは疑問です。そういった文章に書いてある範囲の自衛法は、ほとんどの人がやっているわけですし、自衛法の範囲を広げれば、日常生活すらままならなくなります。(コストの面でも、時間の面でも)
方法を知っていて、それを怠ったときに被害に遭えば(たまたまだったり、どうしようもない事情がある場合でも)、被害を受けた自分を責める事になりますし、多くの方法を知れば知るほど、身動きできない状態に陥ります。
また、性犯罪(や性暴力被害)の加害者は被害者の身内や顔見知りというケースのほうが多いので、上記のリンク先のような方法はそういった場合には役立ちません。

ネット上で行われる「自衛を考える議論」というのは、害はあっても利は少ないだろうと思います。
ましてや、はてなハイクなどで行われる議論は、流れ去っていきますし、そこに参加した人たち以外にはアクセスしようもない議論ですしね。(被害に遭う前の人がたどり着いて「いい情報があるじゃん」となることは、たぶんない)

なので私自身は、「私が考えた自衛法」をネット上で語ろうとは思いません。

■補足エントリhttp://blogs.dion.ne.jp/akiras_room/archives/9593319.html
posted by 中島 葵 at 16:12| Comment(0) | TrackBack(1) | 性暴力被害 | 更新情報をチェックする

2010年04月27日

私信のような、そうでないような。

「人の心を傷つけてはいけない」という間違った考え - はてこはだいたい家にいる
というエントリについて、私は、はてなブックマークで以下のようなコメントをしました。

階層1
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/kutabirehateko/20100424/Conscience
akira-2008  コミュニケーション この文章のどこから『性暴力からの具体的な自衛手段』を読み取ったらいいのか、どうしても分からない。/ひょっとしてここ?>『あなたはあなたの行動と良心に責任を持たなければなりません』2010/04/25

階層2
http://b.hatena.ne.jp/entry/b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/kutabirehateko/20100424/Conscience
akira-2008 http://d.hatena.ne.jp/kutabirehateko/20091229/1262062312 からぐるっと回って着地点がここ。ある意味で納得。 2010/04/25
 

それに対して、manysided-多面体さん、PledgeCrew-かつさん、y_arim-有村さんから、相次いでIDコールをいただきました。このエントリは三氏に対する返信です。
まずは簡単に、それぞれのコメントに対する直接の応答をします。

■多面体さんへ
manysided id:felis_azuriさんid:akira-2008さんは誤解されてる。はてこさんは本当に悪意ない。悲しんでるかも。確かに具体的な自衛手段と聞くと構えてしまうけど、例えば私が被害者のための具体的な法廷戦略を書くのと同じじゃないかな 2010/04/25

はてこさんに悪意があると思ったからコメントを書いたのではありません。あのエントリのどの部分が「具体的な自衛手段」にあたるのか、私には読み取れなかったので疑問に思ったことを提示しただけです。はてこさんの内心については多面体さんはそう考えていらっしゃるのですね。としか申し上げることができません。

もうひとつのコメントは、なぜこの文脈でご自身の病気のことを開示されたのか、はてこさんの持病のことを示されたのか、また、そのことで何を伝えたかったのか理解できませんでした。申し訳ないですが、この件に関しては保留とさせてください。

■かつさんへ
PledgeCrew id:akira-2008 DVや虐待、性暴力とかの被害者で「自己肯定感」の欠如に悩む人とかも多いのでは。そういう人らがこの文の対象なのでしょう。本人はハイクで「親子関係こじれてる人たち」と書いてます。批判はそれからでも 2010/04/25

どういった方が対象であるかについて、「確かに「信者」を集める危険性はあるけど」という言葉で、かつさんも指摘していらっしゃいます通り、あのエントリは一般向けと読まれる可能性が大きいことは間違いないでしょう。しかし、私はそのようには読んでいません。はてこさんのblogエントリはいわば「連作」ですので、前のエントリの流れを汲み、あるコメンターさんへの応答として書かれたものというふうに理解しています。その他に想定される読者として、DVや虐待、性暴力などの被害者が見込まれていることは同意です。

IDコールに先立つコメントに「宛先が違えば論理も変わる。」と書かれていることから、私が、はてこさんのこれまでのエントリとの矛盾を指摘していると受け取られたのではないかと考えたのですが、いかがでしょうか?
それを前提にお答えさせていただきますと、私は、はてこさんの「連作」には、ある主題が繰り返し登場すること(連作ですから、当り前なのですが)から、コメント中のリンクで示したエントリとの共通点、またblog全体を通しての一貫性に対し「ある意味で納得」と書きました。

また、批判は早いとのご意見に対するお返事として、最後であのコメントを書くに至った経緯を説明したいと思います。

■有村さんへ
y_arim メタブクマの翼, メタブクマに続く id:akira-2008氏へ:まず、これはid:manysided氏のブログタイトル「あなたは悪くない」に通じる話。「人の心を傷つけてはいけない」的考えのひとは自尊心が低い。性暴力被害に遭っても自分を責めるんですよ。(つづく) 2010/04/26

y_arim メタブクマの翼 (つづき)id:akira-2008 あと、これはデートレイプやDV、性的虐待からの自賊手段と考えるとわかりやすいかと。「あなたの愛する人があなたを深く傷つけ」ることに対しては、相手を傷つけてでもNOをつきつけねばならない。2010/04/26

私宛ではないですが、はじめに書かれたコメントも含め応答させていただきます。
有村さんの最初のコメントで、かのエントリは共依存やAC関連の書籍の内容に合致すると書いていらっしゃいましたが、私も同じような印象を持ちました。トラウマ治療等でよく使われている「認知療法」の理論を基に書かれているからなのだと思います。

冒頭の「人の心を傷つけてはいけない」だから「自分は誰からも傷つけられるべきでない」という思い込みを持つことで、「自分を傷つけるすべての人を断罪しなければならなくなる」に続く主張は、この思い込みを転換せよということですね。
ここで認知療法を使うならば、「人の心を傷つけてはいけない」から「人の心を傷つけてもいい」ではなく「時には人の心を傷つけることもある」に、「自分は誰からも傷つけられるべきではない」から「時には人に傷つけられることもある」に転換を図るのではないかと思います。はてこさんの論はちょっと極端だなと感じました。
また、「すべての人を断罪しなければいけなくなる」というのは論理の飛躍で、これに続く文章には無理があると言わざるをえません。

蛇足ですが、これらは、アンガー・マネージメント(怒りのコントロール)にも使われる手法です。怒りに関する問題を持った方が、人から傷つけられた(と自分が感じたときときに)自分の怒りを抑え、相手にぶつけないためにも使われます。怒りの感情そのものは悪ではありませんし、怒りは他者から傷つけられたというセンサーの働きもしますので、むやみに抑えこむのは危険ですけれども。(特に被害体験を持つ人は、このセンサーがうまく作動しないこともあります)

はてこさんの文章を読んで勇気をもらったり回復の役に立った人が沢山いることは幸いです。
あのエントリについては論理の飛躍は見られるものの、他に反論したいところはありません。



最後に、私がなぜコメントをしたのか、その経緯を書きます。

昨年の「曽野綾子騒動」は記憶に新しいと思います。最初に、はてこさんの文章に触れたのはその騒動の最中でした。

性暴力とがんや難病になりやすい性格論に見られる共通の問題-はてこはだいたい家にいる
へのブコメに「一緒に考えましょう。という言葉を拒む人はいないでしょう。これまでの議論は本当にそういうスタンスだったのでしょうか。ちょっと冷静になってからもう一度読みます。」と書きました。

私が乳癌の治療を受け始めたばかりだったということもあり、「がんの原因は性格説」(これに関しても反論はありますが、応答への趣旨から外れますので割愛します)を引用して、性暴力の自衛論と絡めて書かれていることに大きな苦痛を感じました。自分自身の状態から冷静な議論は無理だと判断し、疑問の提示にとどめ反論は控えました。このエントリへの消毒さんからの反論(というか批判というか…)を、後に読ませていただきましたが、私も同じように考えています。

続くエントリでは一転して、被害者への提案という被害者サイドに立ったもので、前のエントリとの落差に違和感を覚えました。

それ以来、はてこさんのエントリは殆ど読んでいます。なぜ読み続けたかといえば、(単独のエントリとして読めば同意できるものも多いのですが)エントリごとの、はてこさんのポジションの取り方が極端に違うことに対する「違和感」を払拭したいがためだったのだろうと思います。
読むうちにblog全体を通して、繰り返し表現されるいくつかの「主題」があることに気づきました。その「主題」に関しては、はてこさんの内面を忖度することになりますし、「主題」を私が語ることは、他の意味合いを持ってしまう可能性もあるので控えさせていただきたいのですが、かつさんへの応答で書きましたたように、blog全体を通しての「主題」の「共通性」「一貫性」に対し「ある意味で納得」し、先の違和感も解消しました。それを書いたのが階層2のコメントです。

ブコメでは批判らしい批判はしてないつもりですが、そのように受け取られてしまったのは私の表現の仕方にも問題があったのかもしれません。
今回、三人の方から一時にIDコールをされるという私にとっては非常に珍しい事態で、対応に時間がかかり申し訳ありませんでした。

※ラブログの操作画面のバグで、ところどころ文字化けしているところがありました。チェックはしましたが、まだ残っていたらごめんなさい。
posted by 中島 葵 at 18:45| Comment(9) | TrackBack(1) | 性暴力被害 | 更新情報をチェックする

2009年12月24日

ぬちぬぐすーじさびら

「沖縄幻想」 奥野修司著 洋泉社 という本を読んだ。
と言っても感想を書こうとかいうわけではない。(というか、私は、いまだ沖縄を語る言葉をもたないので)
この本で出会った「ぬちぬぐすーじさびら」という言葉に、心が打ち震えてしまって、どうしても書かずにいられなくなってしまっただけ。

「ヌチヌグスージサビラ」沖縄タイムス<2000年10月3日>
(アップした直後に、リンク切れで記事が読めなくなってしまいました。まだキャッシュは残っているようです)

終戦直後の石川市。沖縄戦で米軍が造った避難民収容所とその周囲には、戦火に追われた三万の人々。人口二千人の農村は数カ月で“大都市”に変ぼうした。テント、かやぶきの掘っ立て小屋、仮設住宅がすき間なく立ち並ぶ。

 多くの人が知らない土地で、戦争で受けた傷を癒す間もなく、その日を生き延びることで精いっぱいだった。軍作業に駆り出され、食糧と物資の確保に追われる毎日。住民はそれぞれ親せきや出身地ごとに毎晩のように集まったが、明るい話題などない時代だった。

 そこに突然、現れた風変わりな男。それがブーテンだった。

 「ヌチヌグスージサビラ(命のお祝いをしましょう)」。民家から、すっとんきょうな甲高い声が響く。「ジャカジャカジャン」。三線が鳴り、うたげが始まる。突然やって来た中年の男が、即興の歌を民謡の節に乗せ、琉舞を崩したヘンテコな踊りを舞う。珍客にあぜんとする住民たち。だがやがて、ユーモラスな姿に乗せられ、一緒に踊りだす。終戦の年、四十八歳のブーテンはそうやって地域を回った。

 当時、ブーテンに連れられ民家を訪ね歩き、後に弟子となった芸能家・照屋林助さん(71)の印象に残っているシーンがある。

 ともに訪問したある屋敷。家の中には位牌(いはい)があり、家主が涙を流していた。「何でこんな悲しいときに歌うの」。問われたブーテンは答えた。「亡くなった人たちのためにも生き残った者が元気を出して、沖縄をしっかりつくっていかないと。はい、スージ(祝い)しましょう」。彼の言葉に家主の表情が変わった。林助さんはそのとき、芸能の力と、その魅力を引き出すブーテンの天賦の才能を感じた。


児童虐待やDVあるいは性暴力被害などの被害体験を持つ人の事を、敬意を込めて「サバイバー」と呼ぶ。困難な状況を生き抜いた人という意味で使われる。そして自助グループではサバイバーどうしを「仲間」と呼び合う。

性暴力被害者は、事件のせいで(司法に訴えるかどうかは別として)、仕事や住居を変えざるを得なかったり、身体的精神的な後遺症によって、それまでの生活が一変してしまうことも多い。事件を知られてしまえば、周囲からの心ない言葉や中傷が待っている。そんな状況の中、声をあげることも語ることもできずに、自分を責め続けてきた多くのサバイバーを知っている。その中には、力尽きてしまった仲間が何人もいる。

今回巻き起こった「自衛(という名の被害者責任)論」にまつわる議論の中で、「犠牲者非難」という表現を目にした。被害者ですらなく「犠牲者」と呼ばれることは、この議論の性質を物語っているようにも思える。

「自衛論」は、何も目新しいことではなく、過去から散々言われてきた「強姦神話」の一つに過ぎないが、それを見聞きするサバイバーにとっては、命取りになりかねない重大な発言だといえる。
私のようなひねたサバイバーでさえ、事件直後の周囲からの罵声を思い出したり、覚醒度が上がってしまい眠れない夜を過ごすハメに陥るのだから、事件直後、あるいは、まだ何処にも繋がることの出来ていないサバイバーならなおのこと「お前にも責任があるんだ」という言葉は重い響きを持つだろう。

私が、こうして書き続けているのは、今もつづいている「自衛論」を対抗論で埋め尽くすため。「自衛論」より少しでも多く被害者の目にふれるように、今日も懲りずに書いている。


これを読んでくれている仲間たちへ

よく生き残ってくれましたね。
そして、これを読んでくれてありがとう。
私は、あなたが生きているために、どれほど苦しんだかを知っています。
あなたが生きていることは幸いです。

ぬちぬぐすーじさびら
命のお祝いをしましょう。



一緒に読んで欲しいエントリ

「自衛」を主張したって無意味です。
http://d.hatena.ne.jp/manysided/20091223/1261573269

男性サバイバーからのメッセージ
http://d.hatena.ne.jp/manysided/20091217/1260987389

男たちももっと楽になれるはず。
http://sivaprod.exblog.jp/12512343/

ことばに見放されるということ。
http://d.hatena.ne.jp/kananaka/20091218/1261157972

posted by 中島 葵 at 01:49| Comment(4) | TrackBack(1) | 性暴力被害 | 更新情報をチェックする
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