2009年08月26日

最高検が方針を示す

今朝(8月26日)の毎日新聞1面トップの記事です。

裁判員:性犯罪、身近な人は不選任 被害者に配慮 最高検魚拓】より引用
 ◇不選任で具体策
 性犯罪を審理する裁判員裁判で、最高検は、被害者と生活圏や人間関係が共通する裁判員候補者を裁判員に選ばないよう積極的に地裁に求める方針を、全国の高検、地検に示した。被害者のプライバシー保護が狙いで、該当者については裁判員選任手続きの際、理由を示さずに不選任請求する。被害者には事前に候補者名簿に知人がいるかも確認してもらい、同様に対応する。不選任請求に関する検察の具体的な方針が明らかになるのは初めて。

具体的な方法は以下のようなものです。再び上記記事から引用

 検察幹部によると、被害者に日常生活の範囲や人間関係を尋ね、地域や団体など「一定の範囲」を設定する。選任手続きでは、「住んでいる自治体は」「職種は」「大学生の知り合いがいるか」「何のサークルに入っているか」などと候補者に対して裁判長に質問してもらい、回答が「一定の範囲」に当たれば理由を示さず不選任を求める。該当者が法定の人数を超えた場合は追加質問で絞り込む。

 また、被害者に候補者名簿を示して知り合いと同じ名前があれば、年齢や容姿を聞く。選任手続きで同一人物と確認できたり、別人と断定できない場合は同様に不選任を求める。「不公平な裁判をする恐れがある」と判断できれば、それを理由に不選任請求する。

社会総合面には、この記事の解説が載っていました。
解説:性犯罪事件の裁判員除外、最高検指針 被害者、不安なお 具体的範囲など課題 【魚拓】より引用
 検察側の方針は、被害者側の要請に応える内容だ。ただし、理由を示さないで不選任請求できる原則4人まで候補者を絞り込む必要がある。被告が複数の事件で起訴された場合は、被害者も複数いて絞り込みが難しくなる。候補者への質問は裁判長しかできず、検察側が求める質問が採用されるかどうかも不透明な側面がある。除外を求める具体的な範囲の設定も今後の課題だ。

 性犯罪を巡っては、6人の一般市民に被害を知られる負担や公開法廷でいわれなき「落ち度」を追及される不安など選任以外の問題も指摘されている。「精神的な二次被害を恐れて被害申告を控える人が増えた」と指摘する関係者もいる。検察を含む法曹三者は、さらに努力を続ける責任がある。


寝ぼけ眼で記事を読んでいて、一瞬「最高裁」が通達をだしたのかと勘違いしましたが、方針を明らかにしたのは「最高検」でした。これまでの動きを見ていた感じでは、検察はこの件にかなり熱心に取り組んでくださっているようです。

検察が具体的な対策を打ち出してくれたことは、被害者にとって一つの安心材料にはなると思います。しかし、解説記事にあげられているように、法廷における2次加害の危険性や、一般市民が「性暴力犯罪」に対して抱いている偏見をどう解消していくかなどの問題は依然として残されたままです。

気になるのは、本来、検察側、弁護側双方に認められれている「理由を示さない不選任請求」の枠を検察側だけが、この件に使おうとしていることです。緊急避難的な対応策なのでしょうが、本来なら法改正をして別枠を設けるべきだろうと思います。

また、今回の検察の対応を見ていて、一層、検察と被害者の一体化が明らかになったという印象を持ちました。今のところ被害者の立場にある私ですが、一つのポジションからのみ裁判員制度を語る危険も感じています。裁判員制度をこのまま続けていいのかという根本的な問いを含め、考え続けていかなければならないと思います。

2009年07月13日

最近の動き

最近、気になる動きが沢山あったようです。

全国4件目の裁判員裁判が、性暴力事件 
http://azuryblue.blog72.fc2.com/blog-entry-697.html
 すでに東京地裁で8月3日、さいたま地裁で8月10日、大阪地裁で9月8日の日程で、裁判員制度の公判日程が組まれているとのことだが、これらに続く全国4件目の裁判員裁判が青森地裁で性暴力事件を扱うことに、8日、決まったという。


青森地裁には被害者のプライバシーの取り扱い等について「ウィメンズネット青森」から要望書が提出されたようですし、地裁側も配慮を持って取り扱うということで少し安心しました。


国会での動き ― 参議院
http://manysided.blog85.fc2.com/blog-entry-22.html

国会での動き ―衆議院
http://manysided.blog85.fc2.com/blog-entry-21.html

特に参議院の議事録の方を興味深く読みました。公明党の山本香苗議員による「裁判員制度における性犯罪被害とプライバシーの保護についての質問」です。
○山本香苗君

もう時間が来ましたので、最後に大臣に是非伺っておきたいんです、御答弁をお願いいたしたいんですが、性犯罪はまだまだ世間的に十分理解が進んでいるとは言い難い状況にあります。

司法関係者でさえ理解のある方は少ないというふうにも言われております。守秘義務のない候補者の方が、たった一人でも不用意にインターネットに流したり、だれかにお話ししたり、さらに不特定多数の人がそういうことによって知る可能性というのが出てくるわけです。心と体に大きな傷を負った被害者の方が、この裁判員制度によって更に多大な苦痛を受けるということは絶対にあってはならないことだと思います。

性犯罪被害者の方々は、被害を他人に知られることを恐れて訴えることさえできないというケースもあるわけです。このままだと訴えるハードルというものが高くなってしまって、性犯罪の助長につながるんじゃないかという声もあるわけです。

是非、性犯罪被害者の方々とプライバシーの保護について、被害者の方々が安心できるような明確な方針というものを、是非この選定手続が始まる前には法務省として示していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(森英介君) 

私も、いろいろな方からいろいろな形で性犯罪の被害者の方の中に大変御懸念を抱かれている方がいらっしゃるということについては聞いております。そのような方々の切実な思いには誠心誠意こたえていかなければならないというふうに思います。

その方法については、今法制部長から様々いろいろと御答弁したことなど考え、またその対処されるわけでございますけれども、いずれにしても、犯罪被害者の方々のプライバシーの保護を適切に図っていくことは裁判員制度の円滑な実施のためにも極めて重要でございますので、こうしたお気持ちにどうやって報いていくかということは真摯に考えてまいりたいというふうに思っております。

○山本香苗君 

是非、その手続が始まる前にそれは出していただけるものと期待してよろしいでしょうか。

○国務大臣(森英介君) 

具体的には、今申し上げられることは、先ほど事務方から御答弁したようなことを考えているわけでございますけれども、いずれにしても、少しでも御懸念を払拭できるような方策を私どもとしても誠心誠意考えてまいりたいということは申し上げておきます。

私は、性暴力被害は裁判員制度に馴染まない(というより、性犯罪に対する偏見が多い世間の常識を裁判に反映させるのは空恐ろしい)から、対象事件から是非とも外していただかなければならないと考えているわけですが、法改正までには時間もかかりますし、今のところ運用面でしっかり対応していただくしかないですね。
国会の場で法務大臣から前向きな答弁を引き出してくださったのは非常にありがたい事だと思います。


鹿児島県議会で、「裁判員制度における性犯罪事件の被害者の立場に立った対応策を求める意見書」が可決
http://manysided.blog85.fc2.com/blog-entry-24.html

意見書が採択されました。とっても心待ちにしていたのですよ。
内容的には、「被害者プライバシー保護に運用面でのしっかりとした対応を望む」というもので、法改正については触れられていません。

各地裁に申し入れを行ったり、意見書が採択されたり、国会で質疑が行われたり、各方面の方が地道な努力をしてくださっていることに心から感謝申し上げます。

衆院解散間近で、今後、国会での動きはストップしてしまいますが、その間にも事件は起き続け、裁判もストップすることはありません。選挙後すぐに動き出せるよう他方面からのアプローチを続けます。


2009年06月08日

お知らせをいくつか

まず、一つ目は。

一緒に動いていたてんとうむしさんとは、事情により別活動をすることになったのは、以前のエントリでお知らせした通りです。
てんとうむしさんからのメッセージや情報を伝える場として、このblogを使えなくなってしまい大変申し訳なく思っていたのですが・・・。

てんとうむし改め多面体さんとして、ステキなタイトルのblogを立ち上げられました。



今後の活動の拠点として、また、被害者の方へのメッセージを発信する場として活用していかれるとのことです。
すでに5本のエントリをアップされています。どれも読み応えがあるエントリばかりで、多面体さんの思いがあふれています。
皆さんにも是非お読みいただきたいと思い、ご紹介しました。


二つ目は。
数日前の報道で、選任手続き上の性暴力事件被害者のプライバシー開示問題について、最高裁が対応策を打ち出したという記事について。
まずは、その記事を一部引用します


裁判員選任、性犯罪被害者に名簿を開示 最高裁が通知へ<魚拓
http://www.asahi.com/national/update/0604/TKY200906040357.html
2009年6月5日7時59分
 裁判員制度で、裁判員候補者から裁判員を選任する過程で、被害者の名前などが示されると「性犯罪被害者のプライバシーが守られない」とする不安が広がっている問題で、最高裁は4日、検察を通じて被害者に先に裁判員候補者名簿を開示して関係者を特定してもらうとの対応策を打ち出した。地裁に通知する。
 同日、国会内で市民団体「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」(運営委員=戒能民江お茶の水女子大副学長ら)などが開いた意見交換会で最高裁側が明らかにした。
 最高裁によると、選任の2日前までに、裁判員候補者名簿を検察と被告弁護人に送付する。被告と被害者の、親族らと雇用関係者は裁判員になれないため、「この時点で不適格事由に該当する人がわかれば、当日は呼ばないなど除外できる。候補者に被害者特定情報を示さなくてすむ」と説明している。


一方、同じ日の読売新聞(オンラインでは掲載されていません)には
「最高裁、具体的策示さず」とあったそうです。
(知人からメールで教えてもらいましたので、全文は読んでないのですが)
メールから当該部分を引用しますと
最高裁側は、伝える候補者の人数をできるだけ絞ると回答したが、具体的な方法は示さなかった。
最高裁の回答は非公開で行われ、性暴力禁止法をつくろうネットワークによると、「被害者側が問題の対策案として提出したうち、現行制度で実施可能なのは、被害者に候補者の名簿を見せ、知り合いがいないか確認する」のみと説明。

両紙の内容を比べると、ずいぶんニュアンスが違います。
関係者に確認しましたところ、(記事にあるような方法で)できるだけ、その前の段階で絞り込むようにするが、場合によっては候補者に被害者の氏名を開示しなければならないこともあるということでした。(かなり不安が残ります)
しかし、最高裁は今後も検討を続けてくださるそうなので、少し前進といった感じでしょうか。

プライバシー問題以外にも問題は山積しているため、裁判員制度から性暴力事件を除外してもらうというのが最終目標ですが、法改正も含むため選挙が終わるまでは本格的な議論は出来ないのではないかと考えています。
しかし、7月中旬から下旬には実際の裁判が始まってしまいます。その間は裁判員法の運用で乗り切るしかありません。
最高裁には対応策の一層の検討と、具体的な指針を早急に出していただくよう強く希望するものです。

私が考える、プライバシー問題以外の論点はこちらをご覧ください。
裁判員制度における性暴力事件を考える。


2009年06月03日

裁判員制度と性暴力事件を考えるサイトを立ち上げました

裁判員船員手続きでの被害者のプライバシー開示問題の経緯と、今後、裁判員制度の導入によって性暴力事件の被害者が被るであろう問題を考えるるサイトを作りました。
私は、このサイトを今後の活動の足がかりにしようと考えています。


「裁判員制度における性暴力事件を考える」
http://www.h6.dion.ne.jp/~half-2/saito/index.html


タイトルもなんだかなーですし、まだ中身もあまり詰まっていませんが、一度お読みいただいて、こういうことも盛り込んで欲しいなどの提案やご意見をいただけると有り難いです。
なお、ご意見はこのエントリーへのコメント欄にお願いします。

(ちなみに、以前運営していた自助グループのサイトがあったスペースを使いましたので、URLには特に意味はありません)

2009年05月31日

最高裁は指針を出さない

中国新聞5月30日の報道より
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200905300110.html
魚拓
 この概要説明で、性犯罪被害者は「三十代のSさん」などとするほか、市区町村の規模により、おおまかな住所地を伝えて、候補者に心当たりがないか尋ねる。

 その後、心当たりがあると答えた人には、裁判長が一人一人実施する質問の中で、心当たりのある人の名前を聞き、被害者かどうか確認する。

 殺人や傷害致死など性犯罪以外の罪名の対象事件に性暴力が含まれている場合も、被害者情報保護の必要性があれば同様の方法をとるという。

 裁判官は独立して職務に当たるので、こうしたやり方を一律に徹底することはできないが、最高裁は「事件に応じた裁判員選任手続きの方法は協議を続けてきたので、各地裁は対応を把握している」としている。


裁判官は独立して職務に当たるので、こうしたやり方を一律に徹底することはできない」のですね。
やはり、最高裁は指針を出さず、裁判官個別の判断に任せるということです。

問題が起きたときに誰が責任をとるのでしょうね。(もちろん担当裁判官でしょうけど)