2009年09月03日

初の性犯罪事件(追記あり)

裁判員裁判で初めての性犯罪事件の審理が始まっています。
裁判員選任手続きや公判初日の様子など、毎日新聞から引用します。

裁判員裁判:性犯罪事件で初 被害者配慮、入念に 質問票も工夫 青森地裁6人選任(毎日新聞 2009年9月2日 東京朝刊)
魚拓

 選任手続きには、重要な仕事など事前に辞退が認められた候補者を除き、出席義務がある39人中、34人が出向いた。裁判員に選任されなかった候補者らによると、配布された質問票に事件概要が記されていたが、被害者は「Aさん」「Bさん」として年齢を表記。メモや録音、撮影を控え、被害者情報を口外しないよう求められた。

 また質問票で、被害者が住む自治体について「ご自身や家族が住んでいたり、ご自身が働いているなど、繰り返し訪れる事情がありますか」とも確認された。青森地検によると「被害者の知人や関係者を除外するため質問票に盛り込むよう地裁に求めた」という。続いて、質問票の答えを基に裁判長がグループごとに質問、12人には個別に質問した。「(事件関係者と)接触する機会があるか」と聞かれた候補者もいた。


裁判員裁判:初の性犯罪審理の公判 青森地裁で始まる(毎日新聞 2009年9月2日 11時32分)
魚拓

 小川裁判長は検察側の起訴状朗読前に、性犯罪の被害者について「被害者保護のため、Aさん、Bさんとして、住所と年齢は読みません」と田嶋被告に説明。検察側は説明通り名前を「A」「B」と表現し、住所も「青森県内」にとどめた。

 田嶋被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。小川裁判長が「この法廷では被告も(被害者の)名前を口にすることは絶対にしないでください」と確認すると、うなずいた。

 続いて検察側が冒頭陳述で「女性の人格を無視した卑劣な犯行」と悪質さを強調すると、女性裁判員が大きくうなずいた。証拠調べでは、「被害者のプライバシーのため」と説明して傍聴席から見える大型ディスプレーの電源を切った。事件を再現した写真が示されると、モニターから目を背ける男性裁判員もいた。


雑感を少しだけ。

裁判所、検察とも、かなり工夫をして被害者プライバシーに配慮をしているようですが・・・。
メディアの関心が非常に高く、多くの報道がなされています。産経新聞では今回も法廷ライブのような記事を書いていますね。(あえてリンクはしません)

しかし、ここまで関心が高まってしまうこと自体、被害者にとってはプレッシャーだろうなと思います。裁判員裁判でなければ注目が集まることもなかったでしょうし、公判の様子がこれどまで詳細に報道されることもなかったでしょうから。犯行の様子など傍聴人に聞かれることすら辛いはずですが、それが記事になり一般の人の目に触れる事態になってしまい、被害者の心痛はいかばかりかと思います。犯行の詳細を知って一般の人になんのメリットがあるのか、とても疑問です。

今回の事件では「被害者の落ち度」が問われることは無さそうなので少し安心していますが、もっと微妙な事件だったらどうなるでしょうね。
また、今回も裁判員の性別や年齢に非常に偏りがあるようです。仕事や生活のために辞退せず裁判員ができる一定の「層」がある気がします。その中からくじ引きで選ぶのでは、偏りが出るのは当たり前かも知れません。裁判における「公平」の意味をもう一度考え直した方が良いのではないかと思いました。

【13:40ころ追記】
見落としていた記事を発見しました。大切なところなので長めに引用します。

<裁判員裁判>5裁判員が被告に質問 青森地裁(9月2日22時32分配信 毎日新聞)
魚拓

◇検察側、事件の内容を詳細に説明

 公判で検察側は、被害者のプライバシーに配慮して名前や年齢を伏せたが、事件状況については被告や被害者の供述調書を読み上げるなど詳細な説明をした。被告の悪質さを示すには一定の説明は避けられないが、裁判員制度の「口頭主義」と、被害者保護のバランスの難しさが浮かんだ。

 従来の裁判は書面審理が中心。事件によっては、裁判官は膨大な書面を読む必要があったが、法廷の場では供述調書の内容などは要旨だけが読み上げられるケースが多かった。しかし、裁判員裁判では、一般市民が書面を読み込む負担の軽減と審理期間の短縮を図るため、「法廷で見て聞いて分かる立証」を原則としている。

 検察側は証拠説明で再現写真などを示す際には、傍聴席から見える大型ディスプレーの電源を切断。被告の供述調書の読み上げでは一部を省略し「調書の写しをご覧ください」と説明したが、性的暴行の内容については詳述した。

 傍聴した中京大法科大学院の柳本祐加子准教授(ジェンダー法)は「供述調書をそこまで読み上げる必要があるのか」と疑問を投げかけた。ネット上に流出する可能性も指摘し「警察に届け出ない人がますます増えるのでは」と懸念した。

 青森地検の吉松悟検事正は「被害者には、やむを得ないことだと納得してもらっている」と説明。ある刑事裁判官は「検事から『犯人を重く処罰するために必要です』と言われれば被害者は嫌と言えない。『こんなに詳細に語られるとは思わなかった』と感じた可能性はある。ただ、証人尋問で本人の口から語らせるよりは良かったかもしれない」と話した。


エントリ中で、一般の人が犯行の詳細を知る必要があるのか疑問と書きましたが、以前の公判でどの程度犯行内容が読み上げられていたか把握できていませんでした、私。

裁判員裁判になったから詳細が読み上げられたのですね....orz
柳本祐加子准教授が指摘されているとおり、すでにネット上に流出しています。しかも新聞の記事として。

「やむを得ないことだと納得してもらっている」って本当なんでしょうか?
以前にも検察がいう「わかりやすさ」の弊害について書きましたが、裁判員の負担を思うあまりに、被害者の負担や裁判の公正さを置き去りにしているのではないでしょうか。
誰のための裁判員制度なんでしょうね。

続編:誰のための裁判だったのだろう

この記事へのコメント
ついにはじまったか、という感じです。
ざっと眺めた感じですが、深刻な二次加害はなさそうな様子で、
わたしも、とりあえずほっとしています。

新聞記事は、すごいたくさん出ていますね。
(全部読もうと思ったけれど、ちょっとむずかしくなってきています。)
多くの人たちから問題意識を持ってもらえている、
というのは、結構なことなのでしょうけれど、
騒ぎが大きくなることで、被害者の心理的負担はたしかに心配ですね...

供述調書をくわしく読み上げるのは、どうなのかな...?
(そのうち、こちらのブログへ、個別に連絡が寄せらたりするのかな...?)
Posted by たんぽぽ at 2009年09月04日 00:09
新聞報道が多いのは、問題意識が持たれているからではなく、
性犯罪ゆえの興味本位が、どこかにあるからなのかな?

もしそうなら、前のコメントは不謹慎なので、もうしわけないです。
Posted by たんぽぽ at 2009年09月04日 00:53
>「被害者の落ち度」が問われることは無さそうなので
落ち度があれば問われる、無ければ問われない、ということでは無いのですか?落ち度が有っても問うな、という意味ですか?
Posted by ハロー・テキサス at 2009年09月04日 21:54
>たんぽぽさん
コメントありがとうございます。返信が遅くなりすみません。

>新聞報道が多いのは、問題意識が持たれているからではなく、
性犯罪ゆえの興味本位が、どこかにあるからなのかな?<

両方の側面がある気がします。5月から様々な方が被害者のプライバシー問題について考え行動してくださった結果でもあると。
第1号なので関心を呼ぶのは必然だったのでしょうし。

被害者の心情を考えると、痛ましいことだと思います。
好んで第1号になったわけではないのですから。
Posted by akira at 2009年09月05日 12:01
>ハロー・テキサス さん
おひさしぶりです。1年ぶりぐらい?

悪いけど、今、ハロー・テキサスさんと言葉遊びをする時間も余裕もありません。

新しく作ったサイトです。時間があったら読んでみてください。
どこかに答えが書いてあるかも。
http://www.h6.dion.ne.jp/~half-2/saito/index.html
Posted by akira at 2009年09月05日 12:46
初めまして。性被害の裁判でネトウヨしていまして立ち寄りました。

>また、今回も裁判員の性別や年齢に非常に偏りがあるようです
以下のブログのコメント欄で、興味深いものがありました。
http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/29d061fb5ef6a69260a4596826261dea

>被害者の負担や裁判の公正さ
同じブログですが、ほかの記事でつぎのようなことを言っていました。
「被害者の心情は推し量っても、法壇の高みから見下ろされ侵入された被告人の心と尊厳に配慮した裁判員が何人いただろう。」http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/5ae4cb860ce89895d7c0af7553011ab4
Posted by たちより at 2009年09月06日 12:56
>たちよりさん
はじめまして。

一瞬、ネット右翼の方かと思いドキッとしましたが、そういうわけではないようですね(苦笑)

ご紹介いただきましたblogを拝見してきましたが・・・。
たちよりさんの、ご意見と同じと考えたらいいのでしょうか?
リンクされた意図が分からず、何ともお答えのしようがありませんので保留とさせていただきます。
Posted by akira at 2009年09月06日 16:53
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