被害者のプライバシーは本当に守られるのか(2)(追記あり)

被害者のプライバシーは本当に守られるのか(1)の続きです。

「どこまで開示するかは、事件を担当する裁判所にゆだねられている」つまり、それぞれの地裁に聞けということなので、福岡地裁にも電話をしました。

Q.裁判員選任手続きにおいて、被害者の個人情報はどこまで開示されるか?
A.事案によって違う。担当裁判官の判断によっても変わると思う。

詳しくは、確認して後日回答するということで(やはり、すぐには答えられないと期日を引き延ばされましたが)21日の約束を取り付けました。


そして、法務省の「法務省刑事局総務課裁判員制度啓発推進室」にも。

まずは、5/6付けの読売新聞の記事を読んで電話していることを告げた上で、裁判員選任手続きで事件の概要説明がされる時に被害者の住所、氏名など情報も開示されると聞いているが本当ですか。と質問しました。
「そうですね。被告人、被害者の情報も含め、どのような事件で起訴されているかという説明がされます」との答えが。

性暴力犯罪の場合もですか?公開の裁判では、被害者の個人情報は申請すれば保護されるという法律との整合性がなくなるのではないですか?と聞くと。
しばらく「そうですよね、う~ん」と悩んでいらっしゃいましたが。
「被害者の方の心情を考えて、申請された方の情報は出さないのではないでしょうか」との答え。

しかし、事件概要説明のあとの質問票に「この事件関係者ですか」という質問がある以上、情報がないと答えられないのではないですか?と重ねて聞くと
「申請をした被害者の個人情報は保護されるので、それを出すとは思えないのですけど」という、個人的な意見(?)をいただきました。
「実際の運用は裁判所なので、最高裁の方に聞いて貰うしかない」とも。

その最高裁におたずねしたら、被害者の情報をどこまで出すかという判断の指針を出す予定はない地裁に判断をゆだねるとしか回答されないので、法務省はこの件に対してどう考えているか聞きたくて電話したこと、被害者支援をしているが自分も被害当事者であること、また、一定の方針がないことで被害者はとても不安に思っていることも伝えました。

また、しばらく悩んでいましたが、「裁判員制度では、事件関係者から危害を加えられるおそれのある例外的な事件については,裁判官のみで審理することになっています。そういう例外的な事件として扱うのではないでしょうか」という個人的な憶測を述べられました。
もしそうしてくださるならそれが一番ですが、それを決めるのも裁判所なのですよね?という質問には、「そうなりますね」との答え。

長い間、書類をめくる音が聞こえたあと「今のところ、どういう場合に開示しないかという規定はありません」

法務省としては、こういった問題点を把握していたのでしょうか?と聞くと
「いままで問題点として、あがっていましたでしょうか?」と逆に質問され、絶句。
この件に関する法務省としての見解や、最高裁に何らかの働きかけをすることはできないかとおたずねすると「運用は裁判所がしますから」「この件に関して法務省は何もできない」とばかり繰り返され堂々巡りでした。

「上に確認してきちんとお答えします。ちょっと時間はかかるかもしれませんが」と言っていただいて電話を終えました。

その間、小一時間、結局分かったことは、
・法務省はこういった問題が起きることを想定していなかった。
・裁判員制度の推進はするけれど運用には関知しない。
・最高裁に聞いてほしい。
だけでした。

また、アジア女性資料センター様からの情報では以下のようなものもあります。
【裁判員制度】性暴力事件被害者のプライバシー確保についての申し入れ
7「被害者の情報保護については、各地裁に対応を委ねる」件について。申し入れの参加者が行なった独自の調査では、「被害者の個人情報を開示しないわけにはいかない」と回答した地方裁判所が複数あった。


裁判員制度 みてなっとく!選任手手続きでは、選任手続き期日(当日)の様子を紹介し、以下のような説明がされています。

「まず、裁判所にお越しいただいた候補者の皆さんには、裁判員に選ばれるまでの流れや裁判員裁判の流れをDVDでご覧いただきます。また、裁判所の職員から事件の概要についての説明があります」
「当日用の質問票では、今回の事件や被告人と特別な関係がないかどうかなどをお尋ねします。」


「読売の記事は誤報」という言説が飛び交っているようですが
関係機関への問い合わせの結果や選任手続きの内容を検討すれば、(少なくとも、あの記事が出るまでは)被害者の個人情報は「基本的にある程度は開示される」のがスタンダードだったのだと理解できると思います。
法務省がそうだったように最高裁もこういった問題が起きることをを想定してなかったと、私は考えています。

そして、問い合わせの回答から分かったことを整理すると

・最高裁判所からは、性暴力犯罪被害者のプライバシー保護に関する方針は示さない。
・最高裁判所は、各裁判所に判断をゆだねる。
・最高裁判所は、性犯罪を裁判員制度の対象外にしてほしいという要望を受け取っても、検討も法律を変える立場にもない。
・担当裁判所は、各裁判官個人の判断にゆだねる。
・法務省は、この件に関して何もできない。運用については最高裁に聞いてほしい。

以上のようなものでした。
責任のたらいまわしが起きていることがよく分かります。
結局のところ、被害者の情報が開示されるかどうかは、担当裁判官の裁量の範囲内だということです。ということは、担当裁判官によっては、情報が開示されてしまう可能性が依然として残されています。

法務省の方との会話で出てきたような「公開の裁判では、申請をすれば被害者の個人情報は保護される」という取り扱いにしたがい、申請した被害者の情報は開示しない方針とか、「例外事件として取り扱う」などの具体的な方策はいくらでも考えられるはずですが、最高裁から示された回答には抽象的な文言が繰り返されるばかり。

当事者である最高裁には、この件に関してできる範囲での対策を練る知恵もなければ、それをする気もないとみた方が良さそうです。
どうしても止めたいのなら、今後は、立法府である国会にメッセージを伝えて行かなくてはならないということだろうと思います。

保坂展人のどこどこ日記によると
5月21日の裁判員制度の施行日に衆議院第2議員会館の会議室で「裁判員制度を問い直す議員連盟」の総会を開くことを決定した。「凍結・延期法案」を施行前に提出するのは、残念ながら時間切れとなりつつある。(明日、一日だけ残っているが) ただし、議員連盟として次なる提案をしていかなければならない。


とのことです。総会は明日に迫っていますが、議員連盟のかた達にメールしようと思っています。

裁判員制度には、性暴力犯罪被害者にとっての問題点がまだいくつも浮上しています。
それらについても、いずれ書くつもりです。

*追記*
申し入れを行ったアジア女性資料センター様が、申し入れの報告をアップされています。最高裁からの回答は、やはり曖昧なものだったようです。

「5月19日の最高裁申し入れのご報告」
http://ajwrc.org/jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=455


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  • Excerpt: 昨年08年11月27日の中日新聞にあったのですが、 裁判員制度に、性被害にあわれたかたへの配慮がないことが、 このときすでに取りざたされていたのでした。 『みどりの一期一会』、08年11月28日エン..
  • Weblog: たんぽぽのなみだ??運営日誌
  • Tracked: 2009-05-21 21:31